メルマガ163号
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日本エコミュージアム研究会メールマガジン 163号 <2022.5.10>
発行人:吉兼秀夫 編集:中野喜吉
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桜の花の下コロナ禍でのどかな花見の宴も望めぬ三度目の春を迎える中、い
くらかは過去の歴史に学んだと思っていた人間がこの21世紀の世界に起こした
「戦争」は何なんでしょうか。進歩なんか出来ない生物でしょうか。(中野)
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【目次】
1.ウクライナと(エコ)ミュージアムについて
2.事務局からのおしらせ
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1.ウクライナと(エコ)ミュージアムについて
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大原一興
この時期のコメントでは、ロシアのウクライナ侵略に触れないわけにはいか
ない。今回の侵攻につながるクリミヤ併合の、そもそものきっかけとなったの
が、2013年からはじまるキーウでのマイダン革命である。この時点からプーチ
ンの焦燥は急速に増大していったと言えよう。この時ウクライナのキーウ市民
はロシア寄りの統治による腐敗政治に異を唱え民主化・自由を求めて市内の広
場(マイダン)に集結し、ヨーロッパ中の連帯と自由を求める象徴的な運動「
ユーロマイダン」となった。その時起きた様々な出来事の市民側からの記録、
例えばバリケード内の生活を記録する写真、ビデオやヘルメット、無線機、防
衛闘争の機材、ポスターや図書、アートワークなどの収集活動とともに、それ
らの自由への戦いの記憶を情報として留めるマイダン・ミュージアムが、市民
によって立ち上げられたのは2014年1月のことだった。特定の場所の出来事の記
憶の継承として、そこに生きる人々の尊厳とアイデンティティの確立、来たる
べき社会への一般市民の強い思いが作り上げたミュージアムとして、自らそう
名のってはいなかったが、本質的にエコミュージアムの精神をもつ活動だった
と言ってよい。
このミュージアム運動は、NGOとして博物館設置に向かって活動し、その後、
マイダン革命で獲得した尊厳をたたえ、さらに100名を超える市民犠牲者の追悼
を併せて、ウクライナ民主化・解放の国家的な象徴として、国立の博物館(Nat
ional Memorial to the Havenly Hundred Heroes and Revolution of Dignity
Museum)として実体化することになり、設計コンペが実施され博物館建築とし
て実現するはずだった。その経緯と現状が今年8月のICOM大会で報告されるこ
とを楽しみにしていたのだが、今年2月に始まった戦争によって、いまここで起
きている事態には、無念極まりないとしか言いようがない。
このことは、最初はエコミュージアムのような、場所・領域を持つが建物が無
く市民発の単なる運動体だったものが、博物館として実体化・恒久化していく
民主化のプロセスの実例として、興味深い。私たちは、せめて、社会と市民生
活の発展が継続的に歴史を紡いでいることを実感し、次世代に伝えるためにミ
ュージアムを欲していることの事実を、共感と連帯意識を持って知っておかな
いといけない。
実は、私自身がマイダン・ミュージアム活動を知ったのは2014年夏にジョー
ジアのトビリシでその活動の中心人物からの報告をきいた時が初めてだった。
ユーロマイダンはニュースなどで知ってはいたが、そこにミュージアム活動が
沸き起こっていたことは知らなかった。歴史の転換点におけるミュージアムの
役割について考えさせられる衝撃的な報告だった。かつてソビエトに占領され
ていたジョージアは、未だに国土の一部が隣国ロシアに支配されているときい
た。そしてトビリシ市内には「ソビエト占領博物館」があり、反ソビエト蜂起
の人々を処刑した無数の弾痕のある客車、刑務所の鉄扉、権力者の座る机へ向
かう長い長い絨毯の空間、など、肉迫する実物資料空間には圧倒される。
今年のICOM大会のテーマは奇しくも「ミュージアムのpower」であるが、そこ
に生きる人にむけて持続可能な社会づくりのための教育力を持つのがエコミュ
ージアムであるとすると、このような民主化の活動には力が感じられる。しか
し、パワーは権力と訳すこともできる。政治力、権力、戦力に対してミュージ
アムはどこまで対抗力を持ち得るのだろうか。 (大原一興)
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2.事務局からのおしらせ
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